紫外線が目にダメージを与える光であることは、よく知られています。しかし、紫外線は目には見えない光であり、長い間、目に見える光=可視光線は目にダメージを与えないと考えられてきました。そんな従来の常識をくつがえしたのが、慶應義塾大学医学部眼科学教室の研究チームが2006に科学誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」誌上で発表したある研究です。
研究グループは、SOD(Super Ooxide Dismutase=スーパー・オキサイド・ディスムターゼ)という抗酸化酵素が働かないように遺伝子操作したマウス、つまり光による酸化ストレスに対して無防備になったマウス(SODノックアウトマウス)に蛍光灯の光を当てて、マウスの目の網膜へのダメージを調べました。その結果、普通のマウスはほとんど目に障害を受けませんでしたが、SODノックアウトマウスは、網膜に障害が見られましたのです。
論文
Imamura Y, Noda S, Hashizume K, Shinoda K, Yamaguchi M, Uchiyama S, Shimizu T, Mizushima Y, Shirasawa T, Tsubota K. Drusen, choroidal neovascularization, and retinal pigment epithelium dysfunction in SOD1-deficient mice: a model of age-related macular degeneration. Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Jul 25;103(30):11282-7. Epub 2006 Jul 14.
また、その後同研究チームは普通のマウスを用いた実験も実施。LED照明の下で①紫外線をカットするケージ(飼育箱)、②ブルーライトをカットするケージ、③普通のケージの3つを置いて、それぞれのケージで飼育したマウスの目の網膜のダメージを調査した結果、ブルーライトをカットするケージで飼育されたマウスが、もっとも目の網膜のダメージが少ないことがわかりました。
目の健康を維持するためには、紫外線だけでなくブルーライトをカットすることも重要である可能性が明らかになったというわけです。